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2014年1月26日 (日)

映画のはしご

私ら夫婦はよくやるのだけれど、先日も、映画のはしごをした。

それはなぜかというと、旦那の休日がめったに無いから、あった時に見たい映画をできるだけ見ちゃおう、ということなのである。夫婦50割使ってね。

シネマジャック&ベティで「ハンナ・アーレント」と「キューティ&ブリー」の2本を見た。

「キューティー&ブリー」はぶっとんだ芸術家夫婦のドキュメンタリー。ニューヨークに住む81歳と59歳の日本人夫婦。二人とも芸術家。ふたりのポンポンとしたやり取り。英語と日本語ごちゃまぜの会話がおもしろい。ふたりとも、とてもその年に見えない。旦那さんはボクシングで絵をかいたり、段ボールでオートバイのお化けみたいなのを作ってる。現代アートって私にゃてんでわからないんだけど、命の奥の方から、おさえてもおさえも出てきちゃう!みたいなものかなあと思った。奥さんの描く絵はどこかで見たことあるなあと思ったら、「ねこのオーランドー」のキャスリーン・へイルみたいだ!と思った。世の中にはいろんな夫婦がいるんだね。と思った映画でした。

次に見たのがずっと見たかった「ハンナ・アーレント」                   新聞の映画評を読んで、ぜひ見たいと思った映画。

この映画を見るまではハンナ・アーレントという哲学者の存在さえ知らなかった。ハンナはハイデッガーを師にもち、第二次世界大戦中にナチスの強制収容所から脱出し、アメリカへ亡命したドイツ系ユダヤ人だ。ニューヨークの大学で教鞭をとる高名な哲学者だったハンナが、一転、世界中から激しい非難をあびてしまう。

それは、何百万人ものユダヤ人を収容所へ移送したナチス戦犯アドルフ・アイヒマンが逃亡先で逮捕され、裁判にかけられることになり、ハンナがその裁判に立ちあいそのレポートをザ・ニューヨーカー誌に発表したことが原因だった。

と、ここまで書いて、急に用事が出来たので、保留にしといたと思ったら、友人に「ブログの続き早く書いて」と言われ、公開してしまったことに気付いたというおそまつ。

で、ハンナ・アーレントのつづき。

ハンナはアイヒマンの裁判を傍聴して驚く。何百万人ものユダヤ人をガス室に送りこんだ人間は、想像していた凶悪な怪物ではなく、命令されたことを無思考に行っただけの、ただの小役人にすぎなかったのだと。

そして、考えることを放棄した人間、他人の事は想像できない、思考能力皆無の人間が起こす悪についてのレポートは、アイヒマンを擁護していると受け取られてしまう。そして世論はヒステリーなまでに、感情論でハンナを糾弾する。

感情的になって、冷静に事実と対することをしない人間の憎悪と連鎖反応はいつでもどんな場面でもおこりうる。

親友にも絶交され、非難から逃れるために別荘に避難しなくてはならず、勤めていた大学からも退職を強いられるが頑として自分の主張を翻さないハンナ。

学生たちに向けて「悪の凡庸さ」の概念について講義する8分間の場面は、すごくかっこいい。その講義の最後にハンナはこう言う。

「ソクラテスやプラトン以来私たちは”思考”をこう考えます、自分自身との静かな対話だと、人間であることを拒否したアイヒマンは、人間の大切な質を放棄しました。それは思考する能力です。その結果、モラルまで判断不能となりました。思考ができなくなると、平凡な人間が残虐行為に走るのです。過去に例がないほど大規模な悪事をね。
私は実際、この問題を哲学的に考えました。”思考の嵐”がもたらすのは、知識ではありません。善悪を区別する能力であり、美醜を見分ける力です。私が望むのは、考えることで人間が強くなることです。危機的状況にあっても、考え抜くことで破滅に至らぬよう。ありがとう。」

考えるというこの行為は何も特別な人間のすることではなく、すべての人間に与えられた権利だと思う。だから、簡単に放棄しちゃダメだと思う。それがたとへ、すぐ結果に結びつかなくても。

先日、ある小学校で子どもの本のことで講演をしたのだが、終了後頂いたアンケートに、「あるブッククラブから毎月本を送ってもらっていたが、今日先生があまりおすすめしないとおっしゃっていた本が、送ってもらった本の中にあって、いい本ばかりだというから信用していたのに、私は混乱してしまいました。」とあって、私はここにも、自分の頭でものを考えない人がいる!と残念に思いました。

そのブッククラブの人は自分の信念と感性でその本がいいと思って送ったんだし、私は私の感性と信念でお勧めしないと言ったんであって、どちらが正しいとか間違ってるという問題じゃなく、自分が自分の子どもにどんな本を読ませたいかが大事でなんじゃないかなあ。

でも、こういうと「子どもの本のことは、よくわかんないんです!」ていうのよね。

世の中複雑で、私もわかんないこといっぱいある。

パソコンのこととか、旦那の給料明細に書いてある、短期掛金とか長期掛金とか何のことかわからない。わからないけど、放ってあることいっぱいある。はずかしいけど。

でも、子どものことや家族の健康にかかわることは、わかんないじゃすまされない。せめて、知ろうとしなきゃ!

めんどくさくても、考えることを放棄しないってことが大事じゃないかな。

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